『ア・フュー・グッドメン』、先日観劇してまいりました~。
(舞台詳細→http://gingeki.jp/special/afew/)
正にタイトルどおり「少数精鋭」な作品でした。
映画をご覧になった方は、ここまで登場人物を絞ってシェイプできるのかとびっくりされると思います。
言葉に言葉を応酬するような凄まじい密度の台詞が冒頭から飛び交いますが、情報と感情が観ているこちら側にガンガン飛び込んできます。
言葉が空疎でなく、また、役者さんが言葉をガッチリ噛み砕いたうえで、全力でぶん投げてきているからこそだなと思います。
同僚の海兵隊員を殺害した疑いをかけられたドーソン兵長を演じるのは平埜生成さん。
初っ端、怒号のような台詞からぶちかましてくださいますが、この血管切れそうな怒号が、この舞台のカラーをバシッと決めてくださいました。
声が割れるほどの怒号は、聞き取りの悪い私には詳細までは聞き取れない部分もあるのですが、とにかく感情をガンガンに載せているので、「何を喋っているか」は不明瞭な部分があっても、「何を語っているか」はこれでもかというくらい響いてきます。
生命力を削るような怒号で宣言しているのは、「海兵隊の誇り」です。
そして、この誇りを巡って物語は展開していきます。
ドーソンを弁護するキャフィ中尉に淵上泰史さん。それまでの裁判をすべて事前取り引きで片付けてきた食えない法務官を、軽やかに演じておられました。
冒頭、彼の好きな言葉は、きっと「効率」だっただろうなと思います。
上手く立ち回って妥当な落としどころを見つけ、最小限の労力で「勝つ」。それをなし得る「能力の高い自分」が大好き! という感じ。
出世はするだろうけど、決して少年漫画の主人公になれるタイプではありません(笑)
そんな彼が「効率」を捨て、捨て身になってドーソンの誇りを守るために戦う。
捨て身になったキャフィは、それまでと打って変わってまったくスマートではありません。
ですが、泥をすするようにもがいて戦うキャフィは、とても人間らしくなりました。
言葉から血潮の熱さが伝わってくるようでした。
裁判を終えた後、彼の好きな言葉が何になっているか、興味深いところです。
キャフィを焚きつける弁護団の同僚、ジョアン・ギャロウェイ少佐に瀬奈じゅんさん。
時代は、まだ共産圏との緊張が険しい米ソ冷戦時代です。
事件が起こったキューバは、その緊張の最前線です。
その最前線を守る兵士の誇りと権利を守りたいと語るジョアンからは、最前線に対する自然な敬意と、実戦には決して参加しない制服組としてのわずかな引け目が感じられて、それがキャラクターの奥行きを増していました。
「軍人らしさ」と「人間らしさ」が相反しない要素であることを、女性の濃やかさも交えながら示してくださったことで、軍隊という日本にはあまり馴染みのない組織が、「人間の集団」として自然に伝わってきたような気がします。
キャフィと戦う検察官、ロス大尉に小西遼生さん。ちょっとひねくれたキャフィと違って、エリート街道のど真ん中をてらいなく堂々と歩いてきたんだろうな、ということが感じられるキャラ立てでした。
キャフィは事前取り引きについても「どう? 俺、有能でしょ? すごいでしょ?」と鼻にかけているのが分かりやすいのですが(それがチャーミングさでもあるのですが)、ロスは自分が有能であるとすら思っていない。
高度な取り引きも「フツーのこと」「当たり前のこと」としてこなしてる感じ。
こんなド直球エリートを嫌味なくまっすぐに成立させられるというのはすごいよなぁ、と。
ドーソン兵長の上官、ケンドリック中尉に菅原永二さん。
我慢の多い役だっただろうなと思います。主人公が打ち勝つポイントとして機能しなくてはならない役なので、好かれる要素が少ないですし……
ですが、物語はそういう役がいないと回らないので、とても大切なところを担っておられると思います。
(映画『図書館戦争』でいうなら、相島一之さんが演じてくださった尾井谷(良化隊隊長)みたいな感じでしょうか。図書隊から見れば相容れない理念で、敵にしかなり得ない。しかし、良化隊には良化隊の理念があるので、彼らもまた「絶対悪」ではない……というような。原作では、良化隊の理念は敢えて書いていませんが)
ドーソンの所属する基地の基地司令官、ジェセップ大佐に田口トモロヲさん。
出てきた瞬間から狂気を感じさせるお芝居でした……前線を担う司令官として、正気を保つためには狂信のように軍を信奉するしかなかった、というキャラだったのかな? と思ったり。
キューバの太陽で脳が灼けたようなイメージもありつつ。
ドーソンらに「コードR(レッド)」を命じたジェセップが「悪」というわけでもないのですよね……
「コードR」によって発生した隊員死亡の責任を、自分で取っていたら、同じ罪状がついても名将官として人々の記憶に刻まれたのでしょうね。
さて、スカイロケット的には阿部丈二さんですね。
判事のランドルフ大佐を演じてました。
地味ですが、とても大切な役を担っていました。
というのは、舞台上で「軍事法廷」の秩序と権威を担保するのは、ランドルフ一人だからです。
映画なら、映像や効果でディテールを積み重ねていけますが、舞台ではランドルフ一人が「法の象徴」です。
ランドルフが正義のジャッジを与えるのはどちらか。
それがこの舞台の見どころの一つでもあり、そのジャッジの正当性はランドルフの役作りにかかっていますが、判事という立場上、誰とも関係性を作ってはいけない役です。
誰かと関係性を作ってしまったら、ジャッジの正当性が失われます。
ランドルフは、何者にも揺らがぬ正義の天秤としてあらねばならない。
地味で、抑制が必要な役です。
私が観た最後の回も、その抑制をきちんと果たしていました。
最後まで、抑制を切らさず、頑張ってほしいと思います。
判事であり、海兵隊員でもあるランドルフが、一度だけ、「天秤」から「人間」になる瞬間があります。
その瞬間だけ、声に個としての感情が閃きます。
天秤としての抑制を貫いたからこそ光る、ただ一点の感情です。
それが、どの場面か、ぜひ確かめに行ってください。
さて、以下はおまけですが。
登場人物の階級は、自衛隊に置き換えると
・ジェセップ大佐、ランドルフ大佐=一佐
・ギャロウェイ少佐=三佐
・ロス大尉=一尉
・キャフィ中尉、ケンドリック中尉=二尉
ドーソンの兵長って階級がちょっとよく分からないんですが……(米軍のほうが下士官の階級が多いので、上手く対応させられないのです)
映画だと上等兵らしいので、その前後だったら、年齢的に士長か三曹辺りかな?
私の作品で自衛隊のほうで階級を覚えた方用ということで☆
(舞台の公式HPのキャスト紹介順に書こうと思ったんですが、階級順の並びじゃないとどうしても違和感があったので、階級順にさせていただきました。キャストさんに失礼に当たってたら申し訳ありません)